私の勤務する広告業界では、現在、グローバル化の進展、インターネット広告専業会社やコンサルティング会社の台頭などで事業環境は厳しくなっています。しかし、日々、目の前の業務だけに没頭していると、環境変化への対応などの広い視点を忘れてしまいます。また会社という大きな組織の中で自分が何をしているのかもよくわからなくなってきます。そうした中、自分がすべきことをマクロな視点から見つめなおす必要があると感じていました。一橋ビジネススクールでは、学んだ知識や理論をそのままで終わらせず、実際の事例を分析することで実践まで繋げることができると聞いていたので、自分の問題意識にぴったりであると感じ、進学を決めました。
平日18時20分には授業が始まるので、定時に会社を退勤する必要がありました。上司も自身がMBA保持者で、通学に非常に理解のある人だったので、業務や退勤について調整をしてくれました。課題については、土日や授業のない平日に集中的に取り組みましたが、間に合わないときは、授業のある平日でも、朝や授業後の時間を活用しました。また、グループワークの課題に限らず、同級生とともに課題に取り組んだり、議論をしたりする機会が多くありました。この経験が、自分の思考を相対化し、視野を広げるうえで、大変貴重であったと感じています。
1年次の導入・基礎ワークショップでは、日本語の文章の書き方から、論文に求められる理論の構築方法、経営学の基本を学びました。毎回提出する要約は、指導教授が丁寧に添削してくださり、自分の文章の書き方を根本から矯正する機会となりました。2年次のワークショップでは、学生は皆それぞれ自分のテーマに基づいて研究を進めていきます。自分が発表を行う際には、指導教授だけでなく、同級生からも鋭い指摘、厳しい質問などが飛んでくるため、準備も大変でしたし、授業後にやや落ち込むこともありました。しかし、その分、自分だけで考えていたときには気づかなかった重要な視点や論理を発見でき、また同級生の優秀な発表からも大きな刺激を受けられました。
MBAで経営学の理論やフレームワークを習得したことで、自社の置かれた競争環境、業界の動向、自社のリソースや強み・弱みなどを、複眼的視点から分析できるようになりました。自社の経営陣はどのような経営上の悩みを抱えているか、その課題に対応するべく、どのような経営方針を策定し、いかに具体的な戦略・戦術レベルに落とし込んでいるか、という企業の意思決定や行動の背景や意図を、少しづつ理解できるようになったと感じています。
仕事とMBAの両立は大変です。私自身、両方とも「火を噴いている」ような状況にも何度か直面しました。しかし、田村俊夫教授が仰っていた「仕事が忙しい人ほど、勉強でも充実した成果を実現できる」という言葉が非常に印象に残っています。実際、仕事が忙しい時ほど、良い論文のアイディアが生まれたり、自分でも納得のいくレポートが書けたりということが私の場合もありました。皆さんも仕事が忙しいことを言い訳にせず、ぜひMBAに挑戦してほしいと思います。そこでの2年間は大変なことも多いと思いますが、きちんと取り組めば、あとで振り返ると、かつて自分の人生で経験したことがないほど、充実した素晴らしい時間となるでしょう。
(2020年3月19日)