MBA授業からの帰り道が思考時間。発想を膨らませる時間に
私は、大学卒業後に就職したエネルギー企業で資源トレーディングの仕事をしながら、将来MBAの取得を志していましたが、海外駐在や国内転勤などがあり、チャレンジする時機を逸していました。その後コンサルティングファームに転職し、エネルギー業界のクライアントを担当していますが、ここでも経営学の知識が必要と強く感じ、MBA受験を決意しました。現在の仕事では、クライアントが抱える経営課題をより大局的な視点から解決していくための知識やスキルが求められます。日々の業務から学ぶこともできますが、それは断片的な知識に留まりがちです。自分自身にとって大切なのは、体系的な知識の土台を構築することだと考えました。
受験にあたりいろいろ調べたところ、一橋MBAは、講義形式と少人数のワークショップ形式のバランスが良いと感じました。講義においては、これまでエネルギー業界に閉じていた自分自身の思考の枠から踏み出し、新たな知識を吸収することができます。ワークショップでは、そうして獲得した知識を基にさらに学びを深めていくことができます。一橋に決めたもう一つの理由は、学術的な学びと実践的な学びのバランスです。MBAの中にはケーススタディ中心のカリキュラムを組むものが多くあります。社会人経験がまだ短い間はより多くの事例に触れることが大きなメリットですが、私の場合はある程度キャリアを重ねていたことから、アカデミックな理論を学び応用力を獲得したいと考えたのです。
在学中の研究テーマは、「資源エネルギー業界におけるトレーダーの学習メカニズム」でした。私自身、以前在籍していたエネルギー企業において資源トレーディングの仕事をしていましたが、社内には確立された学習メカニズムがありませんでした。株式や債券などを扱う金融トレーディングでは、一流トレーダーになるためのステップが確立されていますが、資源トレーディングでも同様に優秀なトレーダーへの育成プログラムを構築できるのではないかと考えたのです。近年の環境問題への意識の高まりや地政学リスクなどエネルギーを巡る不確実性が高まっている時代を生き抜いていく上で、資源トレーディング機能が果たす役割はますます重要になっています。今後のエネルギー産業の持続的な発展へ向けて、在学中の研究を活かしていけたらと考えています。
MBAの2年間を通じたワークショップでは、西野和美教授にご指導いただきました。西野先生は、研究において本当に明らかにしたいことにたどり着くまでの思考の回り道や寄り道を、いつも温かく見守ってくださいました。先生からは何度も「何を明らかにしたいですか」と問われ、千代田キャンパスからの帰り道にいろいろと考えを巡らすことは、私にとって非常に有意義で自由に発想を膨ませる時間でした。
ワークショップレポートを提出
一橋MBAには、幅広い業種から人が集まっており、そこでは多様な意見が交差します。私はエネルギー産業というインフラ供給の使命を担う業界での経験から、仕事を進める上では業務遂行の確実性が一つの重要な要素と考えていましたが、別の業種では走りながら次々と新たな企画を考えるという人も少なくなく、ディスカッションを通じて思考の柔軟性が高まったように感じます。また、広い視野で考えることの大切さを学ぶこともできました。以前は、自分自身の役職や役割という視点から物事を見ることが多かったのですが、今は組織を構成する様々な人の立場に立って多角的に考え行動することができるようになってきたと感じています。こうした自己成長を実感できるのがMBAの醍醐味だと思います。
(2023年4月掲載)